2023年10月4日(水)〜10月27日(金)

筑波大学大学会館アートスペース

午前9時〜午後5時/土日祝休館/入場無料

主催:筑波大学芸術系

企画:寺門臨太郎

 

Selected Works from the Ishii Collection,

University of Tsukuba Art Collection

EI-KYU: Midday Dream

 

October 4 through October 27, 2023

Art Space, University Hall, University of Tsukuba

9:00-17:00, Closed on Sat, Sun, and National Holiday

Organized by Institute of Art and Design, University of Tsukuba

 

2023年8月1日(火)―9月28日(木)

筑波大学 大学会館アートスペース

9:00-17:00/土日祝休館(および8/14-18休館)/入場無料

美術鑑賞をするとき、作品のみを見る人、作品を見てからタイトルを読む人、タイトルと解説文を読んでから作品をじっくり見る人など、情報を得る順序は鑑賞者によってさまざまですが、 鑑賞の手がかりとして 「タイトル」を確認することが多いのではないでしょうか。タイトルは作品につけられた固有の名前であり、鑑賞者が作品の主題や作者の意図を読み解く上で重要な情報を提供する存在でもあります。本展示では、美術作品とそのタイトルの関係に焦点をあてています。 タイトルの付けられ方によりそれぞれがどのような印象を作品にもたらし、どのように鑑賞に影響するかについて再考する機会を提供します。

When people appreciate art, the order of access to information accompanying the artwork differs for each viewer. Some people look at the work only, some read the title after looking at the work, and some read the title and explanatory text before taking a closer look at the work. In particular, you may often check the “title” as a clue to appreciation. The title is the unique name given to the creation. It is a clue that provides essential information to the viewer in deciphering the work’s subject matter and the artist’s intent. This exhibition focuses on the relationship between the artwork and its title. It provides an opportunity to reconsider the title’s impression on the viewer and how it affects viewing behavior.

 

出品作品 / exhibited works

・渡辺晃一《馬・ウマ・うま・UMA》1995年  油彩、石膏・パネル 180×230㎝

KOICHI Watanabe《A HORSE/a horse /horse /HoRsE》1995 oil on panel with plaster

本作は、基底となる大パネルの上に、四分割状に小パネルを配し、各パネルにはモチーフとして動物の「うま」の頭部がそれぞれ異なる手法で表現される。作品タイトルにある「馬・ウマ・うま・ UMA」の4語は、漢字、カタカナ、ひらがな、ローマ字表記の字面から得られるイメージと画中のモチーフの表現が相互にリンクしていると考えられる。そうなると、「馬」が左方上部、「ウマ」が左方下部、「うま」が右方上部、「UMA」が右方下部にそれぞれ相当しそうだ。この場合、漢字、カタカナ、ひらがな、の表記順に作品パネルを見ていくと、徐々にモチーフの存在が曖昧になってゆき、最終的にローマ字の「UMA」に至ると灰色のモノトーンを基調とした「リトル・グレイ」を彷彿とする「UMA(未確認動物)」となり、全く本質が変わってしまうのがおもしろい。皆さんは四つの表記がどのパネルに対応すると考えるだろうか。

 

・福山菜穂子《ある日のこと》2013年  陶、ガラス

FUKUYAMA Naoko《One day》2013 ceramic, glass

ティーカップ、水差し、トレー。日常使いの何気ない陶器かと思いきや、近づいて目を凝らすとそこには…。カップには小さな窓が並び、玄関らしき入口があり、上階へと続く階段がある。まるで小さな妖精が住んでいるかのようだ。水差しの口からは雲がわき雨の滴が落ちる。トレーには水が蓄えられ、プールのようだ。梯子が見えるから21世紀美術館のスイミング・プールか?(違う) 福田菜穂子の陶器作品には用途を超えた形がある。それは、小さな異世界の入り口のようでもある。ちょっとした遊び心で、日常の一瞬をどこか遠くに飛ばすマジック。使い手の想像力で器を組み合わせれば物語性のある風景も出現しそうだ。お茶を飲む、食事をとるといった日常のシーンが突如リアリティを失って、ファンタジーに変わる。そんな意外な転換が、福田の器の魅力とも言えるだろう。そういえば、おとぎ話の書き出しはどんな言葉から始まっていたか、覚えてる?

 

・西村昭二郎《風ひかる》1977年  紙本着色 91×72.8㎝

NISHIMURA Shojiro《Spring Breeze》1977 mineral pigment, water dried paint, india ink, gold paint and glue on hemp paper

二羽の鳥が描かれており、上部の笹の枝に乗っている鳥は、黄金キンケイの雄。もう一方は一見別の水鳥のように見えるが、こちらは黄金キンケイの雌である。空と地面の境目は曖昧で、画面全体を爽やかなブルーが背景を覆い遠近感を曖昧にしているが、笹の影の描写が二羽の位置関係を巧みに表現する。タイトルの「風光る」は早春の季語で、春の陽光のなかをそよそよと風が吹き渡る様を表す。タイトルを知ると、笹が春の光を受けながら、そよ風に揺らいでいる情景が想像できるのではないだろうか。同じく風を主題にした《風の行方-海》とは、風の強さも季節も、ずいぶん違う。

 

・吉野純《失楽園》1993年 油彩、カンヴァス

YOSHINO Jun《Paradise Lost》1993 oil on canvas 181.8×227.3㎝

「失楽園」は、旧約聖書「創世記」第3章からヘビに唆されアダムとエヴァが神の禁を破り知恵の実を食べ、その罰として神がエデンの園から追放する場面を描いた絵画である。失楽園は、本来神とエデンの園を追放されるアダムとエヴァのやりとりを描いたものが多いが本作は、生命の木の下に佇むヘビとアダムとエヴァの二度と戻れない故郷を思い、嘆く姿を極彩色で描く。赤を大胆に用いた構成は、陽炎のように揺らぐ印象を受け、まさにアダムとエヴァの苦難を表現している。作品だけでは、「失楽園」と想像できないが、モチーフと照らし合わせることで、主題が浮かび上がってくる。本作は、聖書を題材に重厚なマチエールと素朴で詩的なフォルムを用いて描くアカデミックな作品である。

 

・藤田志朗《風の行方—海》1998年 紙本着色

FUJIITA Shiro《Where the Wind Goes – Sea》1998 mineral pigment on hemp paper 181.8×227.3㎝

赤褐色の風景の中で鮮やかな色の旗がたなびいている。画面右、上方に位置する鳥のモチーフは風上を向いているため風見鶏と思われる。その足元には消波ブロックのような立体物、さらにその中から画面左に向かって白い貝殻が綿状に堆積してゆく。これらは、題名にある通り海を連想させるモチーフである。黄土色の地面は浮島で、周りは海かもしれない。遠景には、様々な形の建築物が密集・密着し、近代的でありつつも、その色や造形からは荒涼感や恐ろしさが際立って感じられる。空の色をはじめ、風景はその面積の大半が錆びついたような赤褐色を基調として描かれており、荒廃した街を描いているかのようだ。寂れた雰囲気の中で鮮やかな旗をたなびかせる風はどこへ向かって吹いていくのだろうか。

 

・内田雅三《Hiroshima-90》1990年 油彩、ミクストメディア

UCHIDA Gazo《Hiroshima-90 》1990 oil on mixed media in panel 162.1×227.3㎝

中央には三角形の図形があり、その上に被さるように絵の具が塗られている。画中には他にも影や図形、幾何学的な模様が描かれる。直線や曲線といった規則的な線と中心の激しい筆跡の動きの対比、その筆跡がつくりだす凹凸がこの作品の魅力である。本作品内には一眼でわかるような具象的なモチーフは用いられておらず、太さ、動きの様々な線やそれに伴う影が描写の中心となっており、明らかなモチーフがない分、いっそう画面を構成する図形や色彩、影や線の動きに心惹かれるだろう。具象的な物体は描かれないが、作者が何を思って本作を描いたのかを知るヒントはタイトルにある。《Hiroshima-90》という題には作者の内田にゆかりのある「広島」の名前が含まれる。純粋に画面の魅力を楽しむだけでなく、作者が本作品を制作するにあたって広島の地からどのような着想を得たのかといったことに想いを巡らせてみるのも良いだろう。

 

本展覧会の企画について / About the Exhibition’s Program

本展覧会は、博物館学芸員資格に関わる授業の総仕上げである「博物館実習」のプログラム「学内実習」の成果発表として開催するものです。筑波大学芸術系では、芸術専門学群および大学院の卒業生・修了生の優秀作品、および退職教員などからの寄贈作品を400点以上所蔵しており、受講生たちはこの学内コレクションを活用した小企画展を毎年開催してきました。社会の動きに目を向け、美術館の根幹をなすコレクションをどのような文脈で鑑賞者に提示するのか、そこに企画者の力量が表れます。今年は「タイトル」に着目し、作者と作品、展示と観客の相関関係を問い直す企画となりました。学芸員を目指す学生たちによる展覧会をどうぞご覧ください。

This exhibition is an achievement of practical museological training. The University of Tsukuba has more than 400 artworks given by faculty members and alumni and purchased from awarded students. Each year, students have organized small exhibitions utilizing this on-campus collection. The planner’s competence is revealed in the context in which the collection, which forms the museum’s core, is to be presented to the viewer with an eye on social situation. This year’s exhibition focused on the “title” and questioned the correlation between the artist and the work, and between the museum and the visitors. We would be grateful if the viewers could enjoy the first exhibition of the students who aim to be curators. (Course Instructor)

 

博物館実習2023 芸術系受講者一覧

石船初佳、伊藤紬、江原実祝、遠藤花耶、大石彩乃、奥田琉花、木内英実、笹川元康、竹畠薫、田良島津、永井風花、中谷直子、樋口幸ナギーナ、鶸田佐季、藤井椋子、古瀨秀明、宝田紗和子、三橋美音、和田祐香、渡邉結貴 (五十音順)

授業担当教員

寺門臨太郎、林みちこ、水野裕史(いずれも筑波大学芸術系)

 

Tell’em I TriedGary Mcleod & others

筑波大学会館アートスペース Tsukuba university Art Space

66日〜7月27日(休日:土、日、祝日)

Performance time:火・金 12:00~12:10

VR鑑賞リンクは:https://my.matterport.com/show/?m=MRVZxuaMLeH

開館日:月曜日~金曜日(祝日,年末年始を除く)

開館時間:9:0017:00

問い合わせ:大学会館事務室(TEL.029-853-7959

アクセス:関東鉄道バス:筑波大学中央行き又は筑波大学循環バス「大学会館前」下車

 

Curation : Joan Zhang

Poster Design : Dolgion Ganbayar

 

作家プロフィール・Profile

About Gary McLeod & Others: Gary McLeod is a visual researcher from the UK who uses photography to learn about places. He is an assistant professor in visual communication design at University of Tsukuba in Ibaraki prefecture where he teaches photomedia. ‘Others’ refers to people and things that have contributed to Gary’s learning process either practically or otherwise, but it also refers to the conversations yet to be had with you.

ギャリー マクラウド&アザーズは、フォトグラフィを用いて様々な場所について学習するビジュアルリサーチャーです。茨城県の筑波大学にて、ビジュアルデザイン分野の助教としてフォトメディアを教えています。「アザーズ」とは、プロジェクトに参加ないしは他の形で貢献をして下さった人々や、物事を意味しています。

展示ステートメント・Exhibition Statement

Since 2019 I have been making trips to Iwate prefecture to rephotograph changes in the landscape. It started with Kamaishi and Ofunato in November 2019, followed by Kuji, Tanohata, Taro and Miyako at the end of that year, then Rikuzentakata and Kamaishi again in February 2020, Kamaishi and Ofunato in March 2020 just before pandemic measures kicked in, Kamaishi again with students in November 2020 with a short trip to Ofunato, followed by a longer visit to Kamaishi in March 2021, another in July when the delayed Olympics began, another with students in September, and another trip at the end of the year combined with Ofunato. These were followed by an exhibition in Kamaishi in March 2022, trips to Ichinoseki, Ohara, Oshu and Tono with students in July, further trips to Kitakami, Ohara, Orikabe, and Ichinoseki again in September, and two trips to Kamaishi in the autumn of 2022. Trips to Tono and Hanamaki in the February snow of 2023 were followed by a road trip stopping overnight at Kuji, Tanohata and Miyako in March, and a second exhibition in Kamaishi a week later, and then returning trips to Kitakami, Oshu, Ohara, Orikabe, Tono and Hanamaki at the end of May. 

Listing places was necessary so that you know them, will think about them, and perhaps even remember them if you have visited them before. This exhibition is not about comparing these places; rather it is about photomediated representations of change in these places. Specifically, the exhibition is an entry point into the kinds of change that are necessary or hoped for. These are not concrete assumptions but uncertain observations, ever aware of the fragility of photomedia and its need for belief. Regardless of opinions about change, this is a landscape that is and will continue to be associated with disaster and recovery, sea walls and rocky shores, depopulation and migration, and as a ‘playground’ for photographers and scientists alike. The title of the exhibition is “Tell ‘em I tried”, a casual British shortening of “Tell them I tried”, but I’m not telling you who “them” are. Nor am I asking you to work it out on your own. Rather, I present you a sort of map for orientation. After all, that is what photographs are but have cease to become.

この作品は2019年から制作し始めた。リフォトグラフの手法を用いて岩手県を中心にランドスケープの変化を考察している。作家ギャリー·マクラウド&アザーズが2019年の11月に釜石市と大船渡市を撮り始め、同年末に久慈市、田野畑村、田老市、宮古市を訪れて撮影した。20202月に再び陸前高田市と釜石市を撮影し、パンデミック対策が始まる直前の2020年の3月に釜石市と大船渡市に戻ってリフォトグラフした。そして2020年の11月に学生たちと一緒に釜石市と大船渡市を旅行し、翌年の3月から釜石市に滞在した。延期開催されたオリンピックが始まった7月にも学生たちと、9月にも、そして年末には大船渡市に訪れた。ここまで釜石市を中心に再撮影した写真が去年の3月に釜石市で展示された。その後、7月に学生と一関市、大原、奥州市、遠野市への旅行、さらに9月に北上市、大原、折壁、再び一関市を旅行した。そのほか、去年の秋に2回、釜石市を旅行した。今年の2月に雪が降る中で遠野市と花巻市に行った後、3月に久慈市、田野畑村、宮古市に一泊するロードトリップを行った。1週間後に釜石市で2度目の展示、5月末に北上市、奥州市、大原、折壁、遠野市、花巻市に再訪の旅となった。

その場所を知り、その場所について考え、または以前に訪れた人がいれば、思い出すかもしれない。そのために、場所を列挙することは必要だ。今回の展示は、これらの場所を比較するつもりではなく、これらの場所の変化をフォトメディアで表現することを試みる。この展示は、どのような変化が必要なのか、あるいはどのような変化が望まれるのかを考えるための入口となる。これは具体的な仮説ではなく、不確かな観察であり、フォトメディアのもろさや信念の必要性を常に意識している。これらのランドスケープ写真は、変化についての理解にかかわらず、災害と復興、防波堤と岩場、過疎と移住、そして撮影者と科学者の「遊園地」として展示されている。展示のタイトルは「Tell ‘em I tried」で、「Tell them I tried」を簡略化したものが、「them」が誰なのかを教えているわけでもなく、鑑賞者たちに考えさせるわけでもない。むしろ、方向づけのための地図のようなものを提示する。それが写真であり、写真でなくなってしまったものでもある。

 

 

2021年度 UTアート・ストリート展覧会の年間スケジュールリーフレットが公開されました。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、2020年4月13日からUTAC筑波大学アート・コレクション新収蔵作品展の開催を中止いたします。

5月以降の再開日程は未定です。大学全体の今後の対応や動きに合わせて決定します。

お問合せはメールにて受け付けていますのでそちらにご連絡ください。

ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、2020年4月10日からアート・ストリート関連ギャラリーを臨時休館いたします。それにともない、4月、5月の展示は中止となります。
5月以降の再開日程は未定です。大学全体の今後の対応や動きに合わせて決定します。

お問合せはメールにて受け付けていますのでそちらにご連絡ください。

ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

再開に関して、あらためてHPにてお知らせいたします。

市川絢菜個展:LIKENESS が筑波大学アートスペースにて開催しています。
会期:2020/04/02〜05/07(土・日・祝日休廊)9:00〜17:00


展覧会リーフレット


会場風景1


会場風景2

2020年度アート・ストリート展覧会の年間スケジュールリーフレットが公開されました。

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中村伸夫先生による退職記念展が筑波大学アートスペースにて3月2日から3月21日まで開催されます。

展覧会DMより

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筑波大学アートスペースにて、工芸領域教員展が

2020年1月14日(火)から2月27日(木)まで
開催されています。

10:00~17:00開館
休館日 日曜日 

会場風景1

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